精神科に入院してきました。

N良さんと別れてホールに行ったら、なぜか、なぜかごく普通にA本さんがいた。



…………


向こうはナチュラルに会釈してくれたけど、私の喜びったら。

やっと話せる人がいた!


「A本さんっいつこちらに?」
飛びつくように聞くと、彼はさっき移動してきた、と答えた。
「北館で半年反省してろって言われてたから、出してもらえてよかったですわ」
「私も、知ってる人いなかったんで、めっちゃうれしいです!」


彼のテンションは、いつものように「疲れたおじさん」だったけれど、本館で一人ぼっちで、ここも変な人ばかりで発狂しそうだった私には天の救い、とばかりに彼に話しかけた。

 これで母が来てくれないことにいじいじしなくて済む。
私はホールでしばらくA本さんと話した。というかいろいろ教えてもらった。

 この病院のシステム。
A本さんは壊した備品のあるお部屋にもどされたらしく、棚にまだ穴があいている、と言っていた。
 彼は二人部屋で、部屋の相方の男性は「作業所」と呼ばれる障がい者のための働く施設で知り合っていた十年来の友人がたまたま同室だ、とも話してくれた。


 A本さんが本館から一度北館に来てくれていてよかった……

転校生が、クラスメイトとの架け橋を見つけた気分で、私はひたすら彼と話した。



 といっても、いつまでもおじさん一人と話しているわけにはいかない。


ここには大勢の中年も若いのも、とにかく女性がいる。

 私はホールのソファに座って、女性たちを物色していた。