9月19日 入院6日目、またはちょうど一週間

 今日は親が面会に来る!

人恋しかった私は、一晩中何を話そうか、いろんなことを考えていて全く眠れなかった。
顔を洗い、タオルで顔をふき(!)呼吸法をして。

 タオルがあるだけで、なんという自由なんだろう!


7時にホールに行くと、すでにA本さんが座っていた。そこにN辻さんがやってくる。

 テレビは昨日のAKBじゃんけんの結果。
ぱるる、ことぽんこつちゃんが優勝したらしい。

 へええ、かわいいけど、タイミング良すぎてなんかあやしい。
なんて話は他の二人には通じなくて。


 不眠だったため、食欲がまったくなくて、サラダだけでも食べた。
そして、9:20.
事件は起こった。



ーーーーーー

私が、「小人さん」と呼んでいる、背が低くて仕事がよくできる、穏やかな男性ナースがいる。
 彼が9:20にやってきて、
「神崎さん、本館にお引越しです。荷物の準備お願いしま……あんまりない?」
と聞くので、
「私、昨日荷物の自己管理許可でたとこなんですよ」
というと、
「そうなんだ!自己管理になってから早いね、もう本館に引っ越しだよ」
と彼はニコニコと荷物整理を手伝ってくれた。


 このとき私の中に一つのうがった見方があった。
つまり。


 この北館には縛られている人、食事の差し入れ口があって部屋に鍵をかけられている人、そしてあまりに狭い病棟、という「普通のひとなら神経病む」環境がそろっている。


 認知症のお年寄りのご家族は仕方ない、と思うかもしれない。
けれど私は20代で、親も公務員だったりとまあまあ社会的に認められている人だ。



 だから北館を、私の親に見せたくなかったのではないか。
実はいまだに、それを疑っている。

 だって、今日から面会OKで、その日の朝にばたばたと移動したのだもの。


 かくして私は大荷物をカートにのせて、ホールにいたN辻さんにお世話になったお礼を言って、正直別れるのは寂しかったけれど、あの扉の向こう、短い短い5メートルの廊下の向こうの二重扉の鍵を開けられ、そちら側……本館に移動した。



 あまりにも急な、実に20分ほどの移動で、A本さんいお礼をいう時間がなかったのが心残りだった。


2012・11・21 1:27
はなの