朝起きて。
もう何年も病気だったから、仕事以外の日は通信の勉強をしたり、読書したり。
 やる気が起きない病気だったから、スムーズに勉強できなくて。
苛立って。


 両親は出かけていて、私は自分の「できなさ」にイラついていた。


ほぼ一年前、家出をした。
 前の彼氏が暴力団使って脅しをかけてきて、怖くて怖くて、今まで両親に内緒で付き合っていたのだけれど、ついに相談した。


 相談したら、親は失望した声を出した。
その男に怒り狂う、助けてくれる、私のことを大好きなお父さんならそうしてくれると信じて、助けを求めた。

 だけど。

勝手に彼氏を作っていたことに、ショックを受けた父と、失望した母の様子に、私は助けを求める相手を間違えたことを悟った。


 そのとき私は、仕事の都合で祖母の家にいた。
両親がすぐにでも祖母の家に乗り込んでくるのが分かった。
実家に連れて帰られて、「話し合い」という名の、なにか恐ろしいものが待っていることは明白だった。


 だから逃げた。
生まれて初めて、親から逃げた。


 逃げる宛なんかなかった。
だから、前からライブ関係でお世話になっていたIさんに相談した。


 Iさんは、とりあえず、と電話で指示をくれ、合流した駅からファミレスに連れて行ってくれた。



 そこで彼は電話をして、Hちゃんを紹介してくれた。
Hちゃんもまた、ライブ仲間で、彼氏と破局したせいで部屋が余っていて、一人ではちょっときつい家賃の家に住んでいた。



 私はHちゃんちに転がり込んだ。
そして、Hちゃんとの共同生活が始まった。


……と、同時に、Iさんに片思いを始めた。


約一年後、Iさんは「ご両親の理解が得られるなら」と、私の気持ちを受け入れてくれた。


そして、五日前のあの日に至る……