面会もできない、電話ボックスの横には「ご自身の扱いに不満がある際にはこちらへ」と書かれた電話番号と、W県人権センターの番号が貼ってあるけれど、「電話の許可」が出ていない者はテレホンカードすら使わせてもらえない。



 ここでもし、人権侵害が起こっても、その当事者に電話する権利を与えられない限り、この病院が摘発されることもないんだ。



 拘束されているおばあちゃんたちや、幻覚のせいで看護師に暴言を吐かれている女性のことを思った。


 薬漬けにされて、あの女性みたいになってしまったら、
「私のせいじゃない」
って訴えても、助けは来ない。


 ここは合法の監禁所。
社会に「邪魔者」扱いされた私たちが行きつくところ。




 泣いていたら、またナースが通りがかった。
今度は、おとつい私に話しかけ、追加の睡眠薬をくれた、あの恰幅のいい男性だった。


彼もまた、「女の子が泣いているのをみた男性」の反応で、座り込んでいる私に手を差し伸べ、
「どうしたん、どうしたん、大丈夫か」
と心から心配そうな声をかけてくれた。

 そして私が話そうとすると、
「ちょ、こっちおいで」
と、ナースステーションの中にいれてくれた。