9月14日金曜日 入院三日目

 あまり眠れなかったせいか、睡眠薬が体に残って、くらくらしていた。
朝も起きられず、部屋にやってきたナースさんに薬を渡され、ぼんやりと飲んだ。

 そのあとまた眠ってしまい、次は朝食で起こされた。
けれど眠くて、放っておいたら、朝食のプレートをさげにきたナースさんが気を利かして、プレートの上のものを部屋にある机の上に置いて行ってくれた。


 結局起きたのは、体温測定のとき。
ナースさんに体温計を渡され、ようやく身体をおこしてベッドに座る。
 36度6分。


……さて。食欲ないけれど、朝食に挑戦してみるか。

 この病院の朝食は基本的にパンと牛乳なんだけれど、今日はクロワッサンにコーヒー牛乳、そしてゆでたまごだった。

 たまごの殻やら、パンの袋やら、そんなものを捨てようと部屋から出る。
髪がべっとべとだ。


 確か、ホールにゴミ箱があったはず……


と、声をかけられた。
「神崎さん、レントゲンとりにいきましょう」



はい、と答えてナースさんについていく。

ナースステーションのまえの、重たい扉に看護師さんが鍵をつっこむ。
 がちゃり、鍵があいて、廊下にでる。
廊下は実に短くて、拍子抜けするほどだった。
なぜなら5メートルもしない向こうにまた扉があったからだ。
何重にも厳重に鍵をかけられているのが分かった。
 けれど今は、その廊下の横の階段をおりて、どこかに連れて行かれる。



ふと、下半身に下着を着けていないことを思い出した。
昨晩、あまりにもずっとい同じ服を着ているのが嫌で、お部屋の洗面台で下着を洗い、寝ている間に自然乾燥させて、いまは着ている服のポケットの中。



 ポケットに下着を突っ込んでいたことが、レントゲン室で役立った。
レントゲン用の服に着替えるので、中は下着だけになるため、だ。

もちろん、見えないから関係ないのかもしれないけれど、私の気分の問題。
 レントゲン用の服をきて、洗った下着をつけて、私は胸部レントゲンを撮られた。


撮り終わると、また着替え……私は自分が怪我していることに気付いた。
 そうだ、あの日は身体がしびれていて気付かなかったけれど、足の指には血がこびり付いて、脛にも生傷がたくさんある。


 レントゲン室からの帰り、ナースさんに怪我を見せ、ばんそうこうをもらった。



また、二階に戻って鍵を閉められる。
 用事がすんで解放されたわたしは、部屋にもどってばんそうこうを足にはりつけた。



 しばらくすると、今度は白いユニフォームの男性が部屋にやってきた。
ネームプレートには「心理士」とあった。


 彼は、妙に高い声だった。
作った声なのだろうか。
 優しくしゃべろうとしているからなのか、とにかく声が高くて、そしてゆっくりしゃべる彼は、私に「今不満なことはありませんか?」と聞いた。


 2012.11.13 17:41
はなの