お部屋にもどって、あらためて見まわした。

きれいな部屋。
だからこそさびしい部屋。

着ているもの以外、全部病院のもの。


そして……
おそるおそる、カーテンをあけて、見えたものに笑いがこみあげてきた。


ああああ、間違いなくここは精神病院だ。
ドキュメンタリーや映画のイメージを裏切らない。


何が見えたと思う?



竹林。
以上(笑)



窓からは竹林しか見えない。
ワゴン車で連れてこられたから此処がどこかもわからない。




でもどこかで、携帯電話が手元にないことに安心している自分もいた。
面倒な繋がり。携帯があるからこそ感じる、孤独。



お母さんのことも。
お父さんのことも。





そしてなにより気がかりなIさんのことも、頭の外。



考えたら辛くなることから、全部全部引き離されて。


わかってる。
すべて嫌だから死のうとした。




だけど、だけど、Iさんは……
彼だけは……


ーーーーーーーーーーーー

ナースさんが入ってきて、メロンパンとミルク、そしてそっけないソーセージを一本の食事を置いていった。
そして、「若いから自分であけられるよね?」と謎の言葉を言い残し、去っていく。



……何のことだろう?
ソーセージのビニール製皮のことかな?



この疑問はしばらくのちの解決する、つまり、この病棟は認知症のお年寄りが多すぎて、
パンの袋を自力で開けられる人が少ないらしい。




やっぱり歯磨きはできず、いい加減イライラしてきたところへまた誰かが入ってきた。



2012.11.9  13:51
はなの