『ああ、それから――これはちょっとかんばしくない話』

と、アルの声がにわかに、そしてわずかに低くなった。

『なんかヤな感じのヤツが街にいるみたいだ。真輝ちゃんにも蝙蝠は飛ばしてるけど、注意して。買い物の時は特にね。極力、騒ぎを起こさないように』

そこで伝言は終了らしい。

おとなしく止まっていた蝙蝠はパッと翼を開き、開け放していた窓から飛んでいった。主のもとに戻るのだろう。

(ヤな感じのヤツか……まったく。穏やかじゃないときてる)

俺は、平和が好きだというのに……難儀な世の中だ。

知らず唇を噛んでいるところへ、なぜかひょいと蝙蝠が戻ってきた。

どこに止まることなく、俺の頭上をパタパタと飛びながら、

『あ、それと、できたら今晩はシチューがいいなあ。よろしくね』

そう付け加えて、今度こそ蝙蝠は去った。

彼のお気楽さに、思う。

お前こそ気をつけろ、与太者め。