ぴちゃぴちゃとサンルーフから落ちてくるしずくを耳で追いながら、通りを見た。

右へ左へ流れていく人々の頭上には、色とりどりな傘が咲いている。

雨の日はいい。傘の雰囲気で女の趣向がわかるし、なにより、雨音がすばらしい。

余計な雑音を消し、こちらの息を殺してもくれる。



私は、スッとサンルーフの下から動いた。

そろそろ腹が減ったので、今目の前を通った赤い傘の女にする。

雨音と靴音が擦れ合い、心地よく響く。

人混みを歩きながら見上げれば、ふたつの音がどこまでも反響し合う中、漆黒の空から線が落下してくる。

レインコートにそれがポツポツと当たる。雨音は好きだが、そのノイズは大嫌いだ。

まるで、上質に仕上げたコーヒーの中へいきなり市販のミルクをぶち込まれるような、無礼さを感じる。