頬に触れる指が、近い吐息が甘い電流を流す。


瞳の中に映る彼だけが久保姫を支配して。




「だから、俺のもとに嫁いできてはくれないか」




真っ直ぐに見つめられ、真っ直ぐに伝えられる言葉。


どこまでが本気かなんて、わからない。

家の為、奥州攻略の為の嘘かもしれない。


しかし、久保姫はそれでもいいと思った。


この人がこの地を治めるために、この人の子が産めるのならば。

それはきっと幸せなのだと。


初めてその姿を見たあの日。

確かに目の前の男に心を奪われたのだから。


きっとそれは運命だった。