それは、賑わう日の本の中心からは少し離れた東の地。

独眼竜がその名を轟かす少し前のお話。



カタン、カタン



緑が広がる静かな道をその輿は軽快な音を立てて進む。


向かう先は結城氏の館。


輿は、着々と目的の場所へと近付いていた。




「……はぁ…」




ゆらりゆらりと揺られる輿の中。

一人小さく息を吐くは、奥州一と謳われし美しきお姫様。

岩城重隆が娘・久保姫である。


笑うたびその両頬に出来る笑窪がなんとも愛らしい。