「あぁ。結城の…晴綱殿に嫁ぐと聞いたのでな。本当は岩城殿のもとへ赴くつもりだったのだが、間に合わず輿入れの道中となってしまった」



すまない、と晴宗の大きな手が白く小さな久保姫の手を包む。


本来ならば振り払わなければいけないのかもしらない。

輿入れ前の女子が夫となるわけでもない男に触れられるなど、あってはならないのかもしれない。


それでも、久保姫には晴宗の手を払うことが出来なかった。

出来るわけなかった。




(だって…お会いしてみたかったんです)