そんな彼女の耳に降り注いだのは深く低い男の声。


初めて聞いたはずのその声に、何故だか胸の奥がじわりと反応して。

思わず顔を上げてしまいそうになる。


しかし久保姫とて武家の娘だ。

危険があるやもしれない状況でそう簡単に姿を晒すわけにはいかない。


況してや彼女はこれから輿入れする身である。


人質として捕らわれる可能性は十分。


何かあれば結城の家に被害があるかもしれない。

そんなことになれば岩城家も御家存続の危機だ。