橘樹学園のとある教室にて。


「ねぇやばくない? 超やばくない?

何がやばいってホントやばいんだって」

「葉月、いつにも増してうざい」

「私さぁ、またやらかしちゃったんだって」

「なに? また誘拐されたの?」

「いや……今回は受動的な感じじゃなくて、能動的なーーーー」

「30字以内で簡潔に答えて。ーーーー何をしたの?」

「上海マフィアに喧嘩売っちゃった」

「……蘇芳、意外に手が早いのね」


珊瑚がはぁ、とため息をついて読んでいた本から視線を上げる。

にしても、なぜ珊瑚は蘇芳グループをよくご存知なんだろう……

永遠の謎だ。


「お見通しでしたか」

「分かり切ったこと聞かないでくれる?

時間の無駄よ」

「サーセン。どうしよう、また誘拐かなぁ」

「暗殺じゃない? スナイパーとかに殺される」

「うわあ一般人には荷が重いよぉ〜」

「じゃあ先輩に匿ってもらったら?」

「先輩? ーーーーあぁ、先輩!」

「まあ逆上しないとも限らないけどね。

どこぞの可愛らしいお嬢様が」


ちらり、と視界の端に談中の少女を写す。

今日も朝からクラスの男子を侍らせていらっしゃった。


「激しい憎しみの末、生まれる友情!

それもいいじゃない、絵になるじゃない!

おっしゃあ、そうとなったら東雲先輩に交渉に行かねば!」

「1限はサボりねー、おっけー」


目指すは屋上、東雲先輩のところである!