【Haduki】

時刻は7:50。

少々遅い登校だが、東雲先輩(という名のオールマイティパス)がいるので心配はなさそうだ。


「蘇芳真知ねぇ……」

「お知り合いで?」

「俺は中等部からだからよぉく知ってるよ。

……毎度のごとく、笑えねぇことしやがる」

「ははは、本当に笑えませんよ。

どうしよう少年院行きだったら」


蘇芳真知の刺客、藤原葉月を襲う事件(詳しくはWedを)で

心を痛めた私は静かに己の掌を見た。


「思いっきり殴った奴が心を痛めたとかいうな」

「せ……正当防衛っす!」

「まあいざとなったら揉み消してやるから

安心して蘇芳をぶちのめせ」

「日本最大級の極道怖い!」


さらりと笑顔で言い放つ先輩に冷や汗が出た。

そして、先輩の瞳に苛立ちの色が混ざる。

ちり、と頭をよぎる可能性。


「蘇芳真知……蘇芳……ってまさか」

「……勘のいい女は、好かねぇ。が、今回は別だ」

「4、5年前から勢力を急激に伸ばした、あのーーーー?」

「中国・上海を拠点に活動し始めた

マフィア系の経済グループの御当主様のお宅だ」

「わおマフィアかよ」

「そ。で、お前がアッパーかましたのもおそらく」




蘇芳グループ様の下っ端じゃねぇの?




先輩の低くて心地いい声が、今はただの雑音だった。