「取り敢えず入れよ」
「家に?」
「それ以外どこに」
「ダメですよぅ、菖蒲先輩に言われましたもん。
『紅我の家に気安く入ると、足腰立たなくされるよー(ハートマーク)』って」
「……菖蒲……」
俺をどんなやつだと思ってやがる。
そんなにがっつかねぇし、相手も選ぶ。
こんなちんちくりんじゃなくーーーー……って、
よく見たらこいつまぁまぁ可愛い顔だよな。
真っ直ぐで黒々した髪に、滑らかそうな白い肌。
意思の強い瞳はーーーー淡く、緑か。
「おい藤原」
「はい? ってうわ」
「じっとしてろ」
顎を引っ掴んでじっくりと瞳を観察する。
黒い中に、針で描いたように細かな緑が見える。
「ちょ……っ、と、せんぱい?」
「お前の目は緑なのか」
「いや……黒、のつもりでしたけど。母方の祖母はオランダ人です」
「ならあり得るな」
「え、ほんとに緑なんですか? 冗談?」
「マジ」
藤原の目は、その瞬間に爛々と輝いたが
すぐに離れようともがき始めた。
ぱ、と俺が手をはなすと、屋敷の方へ向いてしまった。
「先輩、あんまり顎ばっかり掴まないでください」
「じゃあなんだ、腰でも掴むか」
く、と笑いを飲み込んで、後ろから藤原の腰を掴んでこちらへ寄せる。
にやにやと笑いながら、いつもの軽口を待つ。
「せん、ぱい……!」
顔を覗き込むと珍しく俺好み表情をした藤原がいた。