「慎也、どこ行くの?」 「着いてからのお楽しみだ。」 俺は彼女にそう言い、フッと笑みを溢した。 「もう。意地悪なんだから」 汐莉はむくれた顔をする。 可愛いな。 しばらく車を走らせると、目的の場所に着い た。 いったい何階あるんだ?と感じるほどの高層ホ テル。 思った通り、汐莉は大きな瞳を更に丸くさせ た。 「ほら、行くぞ。」 車を降り、俺は汐莉の手を引き、ホテルの中に 入る。 「し、慎也っ…」 「なんだ?」 汐莉は“訳が分からない”とでも言うように俺を 見上げる。