「……――七瀬さんのこと本気じゃないなら、俺、本気で奪うよ?」


宮崎君の言葉に魁一はピタリとその場に立ち止まる。


そして、ポケットに片手を突っ込んだままの魁一は振り返ることなくこう言った。


「勝手にしろ」


魁一の言葉が頭の中で繰り返される。


あたし達……もうおしまいなの?


魁一は本当にそれでいいの?


あたしのこと……「好き」って言ってくれたよね?


あの日に言ってくれた「好き」って言葉、嘘じゃないよね……?


魁一はそのままこの場を後にした。


残されたあたしはただ呆然と魁一の後ろ姿を目で追うことしかできなくて。


さっきまで止まっていた涙がまた勢いよく溢れる。


「……――七瀬さん、大丈夫?」


宮崎君が何か言葉をかけてあたしを励ましてくれている。


だけど、そんな声すらあたしの耳には届かない。