「たまたまそばを通ったら聞こえただけ。もう返事したのか?」
「まだ……してないけど……」
「あいつ見た目もいいし、女から人気だろ?一途って噂だし、お前ら付き合ったら?」
何故か口の端をクイッと持ち上げたまま楽しそうに言う魁一。
ちょっ……。魁一ってば余計なことを言わないで!!
「なぁ、アキラもそう思うだろ?井上と橘って案外お似合いだし」
魁一!!ダメだってば!!
あたしは絢子とアキラ君をくっつけるためにこういう場を作ったのに、これじゃぶち壊し……――。
「お前、橘と付き合う気か……?」
「さぁ。まだ分かんない」
「何だよそれ」
「どうだっていいでしょ?アキラには関係ないもん」
プイッと顔をそむけた絢子。
すると、アキラ君は勢いよく椅子から立ち上がって絢子の席に回り込んだ。
「……――全然関係なくねぇから」
「え?」
「わりぃ、俺ら出るわ。あとは二人で楽しんで。また明日な」
「ちょっ、アキラ!?」
アキラ君は絢子の手を取り立ち上がらせると、戸惑う絢子を引っ張るようにアイス屋を後にした。



