「ごめん、今何て言ったの?」


「別になんでもねぇよ」


「でも、何か言い掛けて……」


「なんでもねぇって言ってんだろ」


眉間にしわを寄せながら荒い口調でそう言う魁一。


だけど、それとは対照的にあたしの手を握る魁一の手のひらは温かくて優しい。


あたしは魁一に手を引かれ、ゆっくりとした足取りで歩き出した。