そして、さすがにそろそろヤバいと焦りだして、今に至る、と。
走りながら腕時計を確認すれば、会議開始まで、残り20分。
「っやばい、っ、……痛ぁ…」
痛む足に目をやれば、カカトに靴擦れ。
ヒールで爆走したんだもの。当然よね。
階段なんて三段飛ばしよ。ふふん。
『………チッ』
それもこれも、ぁんのおとぼけ専務のせいだ!
専務の馬鹿!
馬鹿、馬鹿!
ムキーっとなりながら、ヒールを脱いで、捨てる…わけにはいかないから、手に持って、そこからまた、走る。
…タバコは吸わないから、喫煙室にはいないだろうし…、コーヒーは、私が入れたのがいいって言ってくれるから、………。
…何を一人で照れてるんだ、私は。
「…最近、緩みすぎ」
ダメだぞ。いつ、また闇の底へ落ちるかわからないんだから。
と、小走りで休憩室の前を通り過ぎようとした時。
「……水木課長?」
そう私を呼んだのは、休憩室からヒョコっと顔を出した、以前の部下。
「!わ、佐原くん?」
あ、違う違う。

