「……帰る所、か…」
ここに来たばかりの幼い私には、その言葉の意味なんてわからなかった。
けれど、今の私にとっては心に大きく響く言葉。
おばあちゃん、大好きなおばあちゃん。
おばあちゃんがいなければ、今の私は存在しない。
本当に感謝してる。
私にとっては、誰よりも大切な人。
でも、今日はその大切なおばあちゃんを悲しませてしまうかもしれない。
私が聞きたいことは、おばあちゃんにとっては思い出したくないことかもしれない。
だけどね、私が前に進むためにはどうしても必要だと思うから。
きっと貴女なら、涙を流しながら笑って背中を押してくれると信じてるから。
私の幸せを、誰より望んでくれる貴女には、幸せだと笑って伝えたいから。
だから今日だけは、貴女を傷つけてしまう私を、どうか許してください。
ふ、と息苦しくなる呼吸を、深く深呼吸をして整えて。
いつまでも変わらず着物姿がよく似合う、綺麗な横顔に話しかける。

