下を向いて目をつぶって、ぎゅっと両手を握り締めて、ベッドの前に立ち尽くしていると、柔らかで花のような香りが鼻をくすぐって、優しい温度に包まれた。
「…謝らないでいいのよ。おばあちゃんも、すみれちゃんと一緒にいたかったの。だから、嬉しい」
「…おばあ、ちゃん?」
「…言って、無かったかしら?」
「?」
「やだ、私ったら…もう。…遅くなってごめんなさい。私はね、すみれちゃんのおばあちゃんです」
「…すみれの、おばあちゃん?」
「そう。…私たちは、家族なの」
「かぞく?」
「そう、家族」
「……ママは?」
「…ママ、は…」
「…すみれのこと、いらなくなった?」
「…すみれちゃん、おばあちゃんはママにお話聞いてないから、ママがどう思っているのかは分からないの。…でもね、おばあちゃんはすみれちゃんと一緒にいたいし、すみれちゃんが大好きよ」
「…すみれのこと、すき?」
「ええ、大好きよ」
「…いらなくならない?」
「ならないわ。…おばあちゃんのいる所が、すみれちゃんの帰る所よ」

