「…すみれ?」
「?どうしたの、純」
「…私達28歳だし、もういい大人じゃない?」
「うん」
「もう若いときみたいに、がむしゃらに走れるばかりじゃないでしょう?」
「まぁ、ね」
そう、現に私は限界が来ていた。
「だから素直になって、ちゃんと一つ一つに向き合って生きるべきだと思うの」
「…うん」
「私はすみれの笑ってる顔が好きだから、すみれが、彼とちゃんと向き合って幸せでいて欲しいって心から思ってる」
「……ありがとう」
素直になるって、なかなかできない。
気持ちを伝えるって、難しい。
言わなくても分かってよ、なんて、可愛くないにきまってる。
「…甘えてちゃダメだよね」
「京香…?」
「どうしても、言えないんだよね」
寂しそうに目を伏せる京香。
「まぁ、切羽詰まらないと言えないってことなんてよくあるんだし、あんまり気に病まない方がいいわよ?」
「…ん、そうだよね」
明るく微笑んではいるけれど、やっぱり表情には陰が残る。

