【完】狼ご主人様と子羊ちゃん






どこか遠い目をしながら、独り言のよう
にポツポツと話だす辻宮のお父さん。



「だけど良い子すぎた。心配になったん
だ。自分の気持ち、全部押し殺してるん
じゃないか……って。秋は少し、自我が
足りなかった……」


「自我……」


「……君には、随分ひどい事を言ってし
まったね……。良いとこのお嬢さんと結
婚させたかったのは、嘘じゃない。でも
好きな人が居るなら、応援するべきだっ
たんだ、親なら……」



そっか…。


辻宮の事を考えて、辻宮を想って……あ
あ言ったのか……。



二人とも、きっと素直さが足りないんだ
。だから、こんなにもすれ違う。



「少し、試してみたかった。秋がどれだ
け君を好きなのか、君にどれだけの覚悟
があるのか……本気、なんだね」



少し微笑みながらそう訊いてきた辻宮の
お父さんに、頷いた。



「……本気なんです……」



もう、離れることなんて、できないの。