「ズルい……」
「別にズルくてもいい。それでお前が、
俺だけを見ててくれるなら……いいよ」
そんな辻宮の声を聞きながら、しょうが
ないから辻宮の言う通りにしよう、と密
かに思った──……。
「お早うございます。美里様、辻宮様」
あれから、廊下に出たとたんメイドさん
に囲まれて、あれよあれよと言う間に着
替えさせられて。
家の中なのに、ドレスみたいな服を着せ
られて、髪の毛も整えられて……。
そして今は、何故かスーツ姿の辻宮と一
緒に、朝食を食べる部屋へと移動してき
た所だった。
「もう社長は居るのか」
「はい。ご着席なられています」
社長……って、辻宮のお父さんのこと、
だよね……


