そう言えば、さっきからやけに視界が霞んでる気がする。 私ーー泣いてたの? 「ふぇ……」 「はあ!?なんでまた泣くんだよ!」 わからない。わからないよ、なんで、なんて。……ただ。 「こわっ…かった、よぉ……」 怖かった。怖かった、怖かった。 あの痴漢の気持ち悪い手の感覚が、忘れられない。 ふと、甘い香りが鼻腔を満たした。