逃げ出そうと身を捩るも、更に辻宮に強
く抱き竦められて。
「は、離せ変態……っ」
せめてもの抵抗でそう言うけど、そんな
自分の声も、震えて、弱々しくて。
こんなの辻宮に効くわけないって、わか
ってるんだ。
「美里」
「耳は……やだ…っ」
「美里、ちゃんと聞け」
どこか諭すようなその声に、身体の力を
ぬく。
すると、辻宮の額が、私の肩に預けられ
た。
「美里……お前は何もしなくていい。何
も考えなくていい。俺の言葉だけ信じて
、俺だけを見つめてろ……」
「なにそれ…」
「美里、お願い」
──お願い、なんて。
そんな弱々しい声で、可愛くねだるなん
てズルいじゃん。


