【完】狼ご主人様と子羊ちゃん





逃げ出そうと身を捩るも、更に辻宮に強
く抱き竦められて。



「は、離せ変態……っ」



せめてもの抵抗でそう言うけど、そんな
自分の声も、震えて、弱々しくて。



こんなの辻宮に効くわけないって、わか
ってるんだ。



「美里」


「耳は……やだ…っ」


「美里、ちゃんと聞け」



どこか諭すようなその声に、身体の力を
ぬく。



すると、辻宮の額が、私の肩に預けられ
た。



「美里……お前は何もしなくていい。何
も考えなくていい。俺の言葉だけ信じて
、俺だけを見つめてろ……」


「なにそれ…」


「美里、お願い」



──お願い、なんて。


そんな弱々しい声で、可愛くねだるなん
てズルいじゃん。