「結婚なんてさせるかよ!」


「あんたみたいな顔だけ男に渡すより確
実に頭のいい選択でしょ!?」


「顔だけ……って!」


「お兄ちゃんはイケメンなのに更に性格
もよくて運動もできて優しいの!」


「はぁ?そんなん、俺だって───…」



「梨子、いい加減にしろ」



どんどんヒートアップしていく言い争い
を止めたのは、そんな声だった。



紀藤の妹が、そちらを振り向いて、顔を
強ばらせる。



「お兄ちゃん……」



その声に寄せられるようにそちらを向け
ば、そこには確かに紀藤が居た。



「年上の人に失礼だろ。辻宮、ごめんな
、俺の妹が……」


「いや…」


「梨子の言ったことなんて、気にしなく
て良いから。梨子、教室戻れ」