なんのお洒落さの欠片もない、ジャージ
姿。窓に映る私の髪の毛は、ボサボサだ
し。



こんな状態なのには、訳がある。



朝、起きたら、何故か目の前に辻宮が立
っていて。



『行くぞ』



まだぼやけた視界と、朧気な思考に、た
だ一言、そんな声が叩き込まれ。



え、と思う暇さえ与えられず、何故か米
俵のように肩に担がれ、ベンツに放り込
まれ───……今に至る、と。



「いやこれ誘拐だろ!」


「うるせーぞ、美里」



やっぱりこんなの可笑しいよ!というよ
うに大声をあげれば、心底鬱陶しげにそ
う言われて。



なんで私が悪者みたいになっとんの。



「……どちらに向かわれているんですか




もう言い返す気力すら失せて、やや睨み
ながらそう尋ねれば。