幸せだった。
もう何もいらないとさえ、思った。
「俺のこと……好きなら許せ」
そう耳許で囁いたときに、一瞬、彼女の
動きが止まったのがわかった。
俺はてっきりそれを、許してくれたのだ
と勘違いしていたが―――……。
その時、縁の瞳に激しい怒りの色が浮か
んでいたことも、拳を固く握りしめてい
たことも、俺は気付かずに。
「秋は……ズルいね」
困ったようにそう言った縁は、もう微笑
んでいたから、俺は何も知らずに縁にキ
スをしていた。
もう抜け出せないくらいに、縁に溺れて
いたんだ。
文化祭では、グランプリが行われた。
縁は中等部でもトップレベルの可愛さだ
ったし、一時期は普通の家庭だったため
、そこらのお嬢様のように世間知らずで
もなかった。


