【完】狼ご主人様と子羊ちゃん





お金持ちの人達はすごくきらびやかな世
界に居るけど、時々それが霞んで見える。



酷い時にはまるで、ブラックホールにさ
え思えるから不思議だ。



辻宮……きっと苦労してるんだろうな。



そんなのは誰もが知ってる事実で、事情
もわからない私が、生半可に慰めや同情
をしていいいものじゃないのも知ってい
た。



……私の出る幕はない。



私に出来ることと言えば、子供のように
震えてるこいつを、ぎゅっと抱き締めて
あげる事くらい。



私は役に立たないんだ―――。



「……お前、今、何を思ってる?」



不意に聞こえてきた声に、思わずビクッ
と肩を跳ねさせた。



「……へ?」


「……何を、考えてたんだ?」



苦し気にそう言われて、胸が締め付けら
れる。