ああ、あの―――セクハラ司会者。 思い出すと、先ほどの怒りが沸々と甦っ てきて、舌打ちしたくなった。 本当に、いい迷惑なんだから。 「あんたこそ……。ステージの上で、あ んな気だるそうに立ってて、随分余裕み たいね」 嫌味のつもりで言ったのに、辻宮はそれ を笑顔で返してきた。 「別に。俺が負けるわけねーし」 ……うわぁ、ナルシスト。 思わず軽蔑するような目線を投げ掛ける と、辻宮が私のほっぺたをつねってきた 。 容赦なく引っ張られて、声にならない悲 鳴をあげる。