料理の注文が終わり、メニュー表が下げられる。
折角の盾を奪われてしまい内心残念に思っていると、
思い出したように「そうそう、愛歌…」
と私を呼ぶ母親。
「こちら、牧野夫婦の息子君、牧野 葉月(まきの はづき)君ね」
本来の目的を思い出したように突然言った母親に、
今更紹介かよ……と思ったのはその場に居た全員だろう。
証拠に親たちは『今更かよ』と言いながら『高校の時も愛子は~』なんて、高校時代の話に花を咲かせていて、
名前を紹介されたまま、また放置になった私と葉月君。
日頃男子はみよじで呼んでいるが、ここは3人とも『牧野』なので、『葉月君』と呼ぶしかないだろう。
まあ、今日だけの関係だし、この位の馴れ馴れしさは許してもらおう。

