こんな時に限って、人が多い駅……
こんなの無理…面倒臭い…
私はいつもそうやって頭で考えて、楽な方へ逃げていた。
『馬鹿じゃないの?』なんて、理性で冷静に考えてまとめた。それが楽だった。
でも、楽じゃなくても…大変で時間が掛かっても…冷静な判断が出来なくても…
それでも心がウズウズして…身体が動いて、
行動してしまう事がある事を知った。
それが、人や自分を大切にして起こす事なのも。
「あっ!」
チラッとサラサラな黒髪が見えた。
人の邪魔にならない柱の隣に立って、周りを見ている。
『居た』と声で囁いた瞬間には、そこへ一直線に向かった。
あと5mのところで、葉月君が私に気付いて、目を見開いたのがわかった。
それはそうだろう。
今まで逃げていた奴が急に自分へ突進してくるのだから……

