本能で恋を





門の近くへ行くほど、人が集まっていて、
やっと姿が見えたのは門の直ぐ近くだった。




「あ……」


「……やっと来た」



小さく声を上げた私に気付いてこちらを見たのは、

やっぱり葉月君だった。




葉月君が動き出せば、皆追う様に目線を動かす。

声を上げた私と、私を見て寄ってくる葉月君を見て、セナは「えっ?知り合い!?」なんて私に聞いていた。



しかし、私にはセナに答えられるほど余裕は無かった。
『何のようだよ』と訴えながら、こちらにくる葉月君を睨む。



同じく冷静な彼だからだろうか、
彼が他の人より分かり辛い表情をするからだろうか、

いつもは『仕方ない』で済ませて冷静に判断している私なのに、葉月君に対して、感情を出す事が多い気がする。




私は、葉月君が私の目の前に来るよりも早く、早歩きで門をくぐって、駅までの道のりを進み出した。