要の家の周りは 花であふれていた

玄関はもちろん 庭の奥に至るまで手入れが行き届いているのがうかがえた


”お袋の趣味なんだ”


途中まで迎えにきてくれた要が教えてくれた





要のお母さんは ふんわりとした 穏やかな人だった

庭の花々に見とれている私に



「まぁ ようこそ 外からお声がしたから・・・こちらにいらしたのね」



庭の奥から姿を現した 彼のお母さんのまろやかな声は

私の緊張を 一気に解きほぐした



「花も木も 今が一番生き生きとしている時期なのよ 

円華さん 本当に良いときにいらしてくださったわ」





思いの外長居をした

昼食をご馳走になり 帰りに お母さんが丹誠込めて育てた切り花もいただいた



「もっと早く 円華さんにお会いしたかったのに 

要ったら なかなか言わなくて

でも こうしてお会いできて良かった 

これからも 要をよろしくお願いしますね 

また遊びにいらしてね 今度は一人でもいいわよ」



「お袋 なに言ってるんだよ 俺はのけ者か?」



要の満更でもなさそうな顔と お母さんのまろやかな声は

私の心の中を しっとりと落ち着かせた







要の家を後にして彼の車で出掛けた

今朝 あんなに緊張していたのがウソみたい

今まで抱えていた不安が取り除かれ 私の口も滑らかに動く



「私 要のお母さん大好きよ 全部を優しく包み込んでくださるみたい

要って お母さん似だったのね 目と口元がそっくりなんだもん

今もお綺麗だけど 若い頃はもっとお綺麗だったでしょうね

でも お父さん 若々しいのね ウチの父より年上なんて思えないわ」



私の話を聞きながら要が笑っている



「親父 若いだろ? お袋と5歳も離れてるからね 

円華のお父さんより歳は下かもな」



えっ お母さんと5歳違うって!



「ねぇ ねぇ それって もしかしてお母さんの方が年上なの?」


「そうだよ 年上だから 結婚するときずいぶん反対されたって聞いたけど」


「どうして どうして もっと早くそのことを教えてくれなかったのよ!」



全身の力が抜けた・・・