別れてきたって ものすごく気になる台詞を聞いたんだけど・・・

何て相づちを打とうかと考えてたら 彼の方から先に言葉が出た



「円華さんの方こそ彼は? 俺なんかと遊んでていいの?」


「いないわよ いないから こうしてアンタと遊んでんじゃない」



”はは・・・そりゃそうだ” と さっきの言葉を吹き飛ばすように彼は笑った

聞いてはいけないことを聞いた思いを払拭したくて 私も陽気に振る舞う


家から用意してきた おにぎり お茶 果物 お手ふき 等々

それらを威勢良く並べる



「どんどん食べてね 私もお刺身 ご馳走になるから」





お日様が高くなる前に 私たちは引き上げた

ボートを返し 帰り支度をする



今朝 ボートに乗るときは さりげなく手を貸してくれ

降りるときは 私の腰を ひょいと抱えて下ろしてくれた

その動作が あまりにも自然で 何の抵抗もなく彼に身を預けてしまった


どうしてだろう 工藤君といると楽に振る舞える

男性に対して どこか身構える私を 難なく扱う彼


工藤君にも 一線を引いていたつもりだったのに

彼は その線を ”ぴょん” と飛び越えて私のそばにくる


好感が持てるとか 気になるとか

そんな感情とは違う 別の何かを 彼に感じた

でも


”別れてきた・・・”


この言葉がずっと引っかかってる

私から聞くのも憚られるし でも気になって仕方がない

どうしてこんなに彼のことが気になるんだろう

過去に付き合ってた彼女のことなんか聞いて 私どうするつもり?


自問自答が続く・・・



「円華さん 何考えてるの? さっきから黙り込んじゃって 

船酔いでもした?」



運転をしながら 彼が心配そうに私をちらっと見た



「うぅん なんでもない」



ウソ 気になって仕方がないのに どうして正直に聞けないんだろう



「円華さんって ホント ウソがつけないね そこも好きなんだけどさ」



また”好き”と 彼が言った

どうして私を好きなの?

あーもうダメ 気になって仕方がない