私の話を、あーくんは黙って聞いてくれてる。



「だって雄大先生とお父さんの話聞いちゃった……っ、」

「…」

「私、大人になれないまま死んじゃう。
あと頑張って10年って言ってた」

「…っ」

「あー、くんっ。私、死んじゃ、う…、っ」




最後の方は、嗚咽だらけで何言ってるのかすら聞こえなかったかもしれない。
滴るように落ちてくる涙を、シーツがどんどん吸収していく。



「……泣くな」

「ふっ、んっ…」

「…わか、俺がお前の治療法絶対見つけ出す」

「…え」



ピタリ、涙が止まった気がした。



「お前が馬鹿みたいにはしゃいで走れるように、俺も頑張るから」

「…っ、本当?」

「ああ、だからお前も、泣いてる暇あったら馬鹿みたいに笑って頑張っとけ」



「な?」と、あーくんは親指で私の涙を静かに拭った。
涙が口の端に入ってきて、ちょっとしょっぱかったけど。



そのしょっぱさが、なぜか私には魔法の薬みたいに思えて。
きっと、あーくんの温かい言葉のおかげだと。



私は途端に笑顔になれた。









それは、まだ幼き小学2年生の私と少し大人びた中学2年生のあーくんとの約束。