勇者と言う二つ名に惹かれてなのか、言い寄る女性は今まで数多くいた。
堂々とした見た目や立ち振る舞いも少なからず影響したのであろう。
しかし戦闘以外に興味が無い彼は、その全ての好意を断っていたのだ。
ところが、そんな彼からは想像も出来ない出来事が起こる。
それはザラ国の姫、ナーラ姫との衝撃的な出会いである。
見た目はもちろん美しい女性であるが、それだけで興味を持つバーダーでは無い。
美しいだけなら、今まで近寄って来た女性達の中にも居たからだ。
ナーラ姫の最大の魅力は人を引き付ける慈愛にも似た優しさ、思いやりある人格である。
それは国民の誰もが姫を国の宝と称賛し、身分関係なく好かれる程の人気であった。
けれども、それまで己の強さを追求する事に喜びを感じていたバーダーにとって、例えそれが一国の姫であろうと興味の対象にもならず、その顔さえ覚えてはいなかった。
それを覆す出来事があったのは、バーダーがまだ部隊長になったばかりの頃に起きたのである。
