「ひ…とめぼれ…。」

「うん。だから言ったじゃん。顔が好きだなってまず思ったんだよ。
…でも、中身も多分好き。形振り構わないところとか、…こんな風に顔真っ赤にしてるところとかも可愛いって思うし。」


〝好き〟に〝可愛い〟と顔が熱くなることばっかり、何の気なしにさらっと言ってしまえるところが…なんだかずるい。


「あ、あたしも…一目惚れ…かもしれない。」

「は?」

「顔!顔がとにかく好みだなって思ったの!あたしが思うかっこいいって顔そのまんまだったの!口は悪くてちょっとびっくりしたけど、でもそれも悪くないなって…。」

「…なんだよ、顔!顔!って。」

「そ、それはお互い様でしょ!?」

「ま、それもそうか。でもこれで物語通りじゃねーか。」

「え?」

「舞の大好きなシンデレラ様も一目惚れだろ。王子もだけど。いーんだよ、始まりなんて一目ぼれでも何でも。始まって、それで幸せならそれでいい。」

「し、シンデレラはもっと運命的な…!」

「一目惚れなんてすげー運命的だろ。」

「っ…そ、そうかもしれないけどっ!」


でも、別に顔がかっこよかったから、顔が綺麗だったからってだけが二人の恋の始まりの理由じゃないもん!…多分。


「じゃあ現代のシンデレラ。ひとまずガラスの靴…もとい、ただの靴がぴったりかどうか確かめるか。」

「え…?」


そう言うと、すっとあたしの足元に屈んで、あたしのローファーを手に取った。


「足。」

「へっ?」

「足出せって。ぴったりはまんねーとお前、偽物だからな。」

「っ…自分で履けるってば!」

「いいから足出せ。投げるぞ!」

「うぅ…。」


…恥ずかしさでどうにかなりそうな気持ちを抑え、あたしはゆっくりと足を下ろした。