母さんは部屋まで追いかけてきて、

部屋のドアの前で、

「天道!いいかげんにしなさいよ。」

と怒鳴った。

「だから、違う日じゃダメなのかよ。なんで…」

悔しくって怒鳴り返した。

勝手に頼んで、勝手に決めちゃうとかありかよ。

母さんはいつだってそうだ、

ピアノのことに関してはすぐ先回りする。

「たかちゃん…」


母さんの声は震えていた。

泣きそうなんだって判ったけど、

ここで折れるなんてしたくなかった。

「何が大切か、もうわかる年よね?

 どんな用なのよ。

 レッスンより大切なこと?」



グッと言葉につまる。

言えるわけがない。


クラスで遊園地の行くとか、

たとえぼくにとって最優先事項でも、

大人にとったらくだらないって一蹴されちゃうことだ。


「…もうっいいよ。」


そうさ、別に遊園地なんて行かなくったって何も構わない。

今の俺に一番必要なのは、

東京に行ってレッスンを受けること。

冷静に考えれば分かること。

でも、


でも、


みんなで勝ち取った賞。


そしてみんなで千葉と思い出を作る約束。


そこにいられないなんて、いられないのかよ?


あと少ししか一緒にいられないのに、

なのに、何より、誰より大切だって思ってんのに


そこにいられないなんて


でも結局

ぼくは君といることを選べない。


千葉の残念そうな顔が目に浮かぶ


畜生っ


バカ野郎!



神様は意地悪だ。


神様の馬鹿野郎!!