なんか、あたし馬鹿だな

ひとり落ち込んで、一人で後ろ向いてて、

届かないものって決めて

何もしようとしなかった。


ダメじゃんあたし。

だってこんなすごい人に好きって言われたんだよ。

この人と一緒に歩こうって思ってたんだよ。

この人と手をつないでいたんだよ。

なのに、あたしは自分で手を離して全部、拒絶してたんだ。


たかちゃんはあたしの手を離れて

こんなに頑張ってるのに

離したあたしは、何の努力もしないで、

できっこない、かないっこないって一人いじけてた。


たかちゃん


たかちゃん



たかちゃん




何かがほどけて、涙が溢れた

あたしが思っているよりもっと、

あたしの全部であなたが好きなんだ


つぅ-----------++++++++


その場に顔を覆って、

座り込んだあたしを

羽鳥君がびっくりして抱え込む



「安土、危ねーから立てっ」



「羽鳥くん。あたしたかちゃんまだ好きでいいかなあ。


 やっぱ、好きなんだあ。」



「うんわかってる。


 わかってるって。」


その瞬間だった。


暗転して、しんとなった会場。


何?


ピアノの音。


キーボードから聞こえるピアノの音は、


無機質だけど、


どこか懐かしく、記憶の奥から何かを引き出す曲。



「これ…」

私が書いてた書きかけの…


立ち上がってステージを見上げると、

たったひとりキーボードを弾くたかちゃん。


いつの間にか覆面も、帽子も脱いでいた。


そしてまっすぐこっちを向いて、

静かに語り始めた…