気を利かせてくれたのか、

ぼくたちは、しばらくの間、病室に二人きりだった。



たまたま、この二人部屋にはぼくしか入っていなかった。



初めは差し障りのない話をしていたが、


いつしか二人共言葉が止まって……


「……」


「眠い?」


「いや、別に…」


「何か話すことなくなっちゃったね。」


「あるはずなのにな、一杯。

 だけどさ、何か俺こんな状態でさ…


 情けないっていうか。

 最後に会うのがこれかよって…

 カッコ悪すぎ…」



「くすっ

 ホントだ

 かっこいいとは言えない。」


「そこ、否定してくれないと!」

「あはは…」

「やっぱ千葉っていじめっ子だ~」

「あはは。」


「コンクールのこと聞いてる?」

俺は誰も口にしなかったことを千葉に聞いてみた。

千葉は、首を振った。

「何も聞いてない。

 ただ、最後まで頑張って弾いてたってことだけ。」


「そうか。」

そういうことなんだろうな。

「聞こえてたよ。

 ちゃんと届いてたよ。

 たかちゃんの音。」

「え?」


携帯を見せて笑った。

「母さんが?」

「うん。」

「そうなんだ。」


全く母さんはいつだって先回りするんだから



「ねえ、たかちゃん。

 あたしたちっていい親持ったよね。

 ほんと、もう、

 やんなっちゃう。」

千葉はポロポロ泣き始めた。

「千葉。」

僕たちは子供で、

でもいつもあがいてて、

ケド、時々こうやって、



周りの大人に保護されてるって。

愛されてるんだって、

思い知らされる。


悔しいけど、

この人たちの子供で良かったって思うんだ。