そんなに無理してまで、演奏したかったわけじゃなかった。

でも、ぼくのせいで、辛い思いをしたり、

自分を攻めたりとか、誰にもして欲しくないと思った。


多分、千葉も、母さんも、

一緒にいたのに気づかなかった自分を

責めている気がするから。


「あまり、効き目はないと思うが、

 それでもないよりあったほうがいい。」


そう言ってドクターは炎症止めと、痛み止めをくれた。


早い時期なら、この薬の服用を一週間もすれば散らせるのだそうだが、


ぼくは我慢しすぎたために、腹膜炎を起こしかけているらしい。


無理をしないこと、必ず戻り次第手術することを約束し、


コンクールに参加することの許可をもらった。



千葉は、相変わらず心配そうな顔で、


「頑張ってね。」


そう言って家に帰っていった。


「千葉!ありがとう。それとごめん。」


視界から消えていく後ろ姿に声をかけた。


もっと言うことあるだろうに、

そう言うだけが精一杯だった。


千葉はは振り向かずに行ってしまった。


泣いていないだろうか、

走り寄って声をかけたいのに、

動けない体、情けなくて悔しかった。