ぼくは母さんを見上げる。


「気分はどうですか?」


ドクターが笑顔で聞いたので、


「あ、まあ、たいしたことないです。」

と答えた。


救急車で運ばれるなんて大したことだけど、

不思議と痛みは収まっていた。


「よく我慢しちゃったみたいだね、


 かなり炎症起こしているみたいだよ?


 お母さんから聞いたよ?明日は大切なコンクールがあるんだって?


 とりあえず、炎症を抑える薬と、

 化膿どめ、痛み止めが効いてるから、

 この状態だけど、あまりお勧めはしないな?

 手術してすぐ取っちゃうのが得策なんだけど、

 君はどうしたい?」



母さんは泣きながら頷いていた。


受けなくてもいいという意味だと思う。


でもぼくは、

「一日くらいなら、なんとかなりますか?」

とドクターに問いかけた。


「う~ん、困ったねえ?なるかもしれないし、

 ならないかもしれない。

 この様子だとまた痛くなると思うよ。」


「できるだけやりたいんです。終わったら手術しますから。」

ドクターはうーん、と唸って考えていた。

僕は何度もお願いしますを繰り返し、

ドクターは渋々許可をしてくれた。


そんなぼくを、千葉は少し離れたところから黙って見つめていた。