「お前、何しての?」
不意に聞こえた声に視線を向けると、そこには表情を曇らせた颯が居た。
だけど、目が潤んでる所為か颯の顔がハッキリ分んない。
「見りゃ分んじゃん。セックス」
「お前なぁ!!」
ダンっと鈍い音とともにあたしに寄り掛っていた男の身体が離れる。
颯に胸倉を掴まれて横の壁に押しつけられている男は平然さを保って、颯を見る。
そんな二人を余所に、あたしは気持ち悪くなった首筋を擦りながらこの場から駆け足で立ち去った。
水がほしい。
水が。
ベタベタする首筋が気持ち悪くて、ここから一番近い公園へあたしは思いっきり走り、まるで喉が渇いた犬のように、水道に飛び込んだ。
蛇口を捻って、長い髪を左手で束ねて右手で首筋を擦る。
濡れる制服なんかお構いなしって感じで水を浴び、シャツのボタンを3つ開け鎖骨部分までゴシゴシ洗った。
夏になるちょっと乾いた空気さえ、重い。
「…美鈴っ!」
荒れた息とともに聞こえたのは間違いなく颯の声。
だけど今、見れる顔じゃないの。
今は見てほしくない。
なのに。



