すると、妃絽は木の横にある池の前にしゃがんだ。



「この池…、落ちたら、本当に時代を越えること出来んの?」



目の前ある池――、『時越池』には池に落ちた者は時を越えるという古い言い伝えがあった。



しかし、実際に落ちた者はいない為、それが真実かどうかは定かではない。



妃絽は近くにあった木の棒で池の中を突っついた。



時を越えると言う程だから深いと思いきや、深さは小さな子供でも溺れない程浅かった。



「妃絽~、繭~、夏樹~!おやつですよ!」



ふと玄関のポーチから施設の職員の声がした。





「あの呼び方、どうにかならないかな…。何か、子供みたいで嫌だな」



「良いじゃない、夏樹。ほら、妃絽も中に行こう」



「ん?うん」



妃絽は中に入るためにゆっくりと立ち上がった。