すると、水溜まりが弾ける音がした。



顔を上げると浅葱色の羽織を纏い、雨の中を走る土方達の姿が見えた。



彼らも妃絽の姿を捉えたらしく、目を見開いていた。



「妃絽ッ!」



足元が覚束ない妃絽に山崎が駆け寄り、支えようとした。



しかし、妃絽はその手を振り払った。




「土方さん…。早く…島原の周りを囲んで、浪士を捕らえて…」



「ああ、分かった。お前は――」



「先に屯所に戻る…」



左腕を押さえる右手に力を込めると、妃絽は再び歩き出そうとした。