揺れる水面 映る月影は何処から



白粉と酒の匂いが妃絽の鼻を突いた。



島原に着いた妃絽はその花街の一角にある見世の部屋の中にいた。



そして、目の前には土方から話を聞いていた芸妓・雛菊がいる。



「ほな、妃絽はん。着物を脱いでおくんなし」



「ぬ、脱ぐ!? 私はこの格好のまま詰めるんじゃないの!?」



「へえ。土方はんからは妃絽はんは女子だから、芸妓の格好をさせるようにと」



今の格好――、男装のまま詰めると思っていた妃絽は呆気を取られた。



それと同時に肝心なことを言わなかった土方に殺意を覚えた。