白粉と酒の匂いが妃絽の鼻を突いた。 島原に着いた妃絽はその花街の一角にある見世の部屋の中にいた。 そして、目の前には土方から話を聞いていた芸妓・雛菊がいる。 「ほな、妃絽はん。着物を脱いでおくんなし」 「ぬ、脱ぐ!? 私はこの格好のまま詰めるんじゃないの!?」 「へえ。土方はんからは妃絽はんは女子だから、芸妓の格好をさせるようにと」 今の格好――、男装のまま詰めると思っていた妃絽は呆気を取られた。 それと同時に肝心なことを言わなかった土方に殺意を覚えた。