自分達の欲で自分を捨てた両親がちゃんと自分を大切に想ってくれている。
それが分かった妃絽の瞳からは次々と涙が溢れて来る。
そんな妃絽を母は抱きしめた。
初めて感じる母の温もりに妃絽は縋るように母の身体に腕を回した。
「ありがとう。お父さん、お母さん…。櫂人もね」
初めて父を父と、母を母と認められた。
それは当たり前のことなのだが、妃絽とって、両親にとっても幸せなことだった。
しかし、そんな両親とも離れ離れになってしまう。
ようやく家族になれたのに離れるのはそれはもちろん、哀しいことだ。
それでも、妃絽は幕末に行く。
家族以上に大切な人達に会う為に――。



